EA(エンタープライズアーキテクチャ)を推進する立場として、AIツールを日常的に使い続けて気づいたことを、2026年4月時点の「現在地」として正直に書いておきます。1年後には状況が変わっているかもしれない。だからこそ今、記録しておく価値があると思っています。

「AIレンズ」を手に入れた話

この記事を通じて伝えたいことは、ひとつです。

AIを使い続けることで、「自分にはできない」と思っていたことが選択肢に入ってくるようになる。自分はこの感覚を「AIレンズ」と呼んでいます。

AIレンズを持つ前は、できないことは切り捨てていました。アイデアが広がることもなかった。でも今は違います。何か課題に直面したとき、「AIを使えばどうなる?」という視点が自然に出てくる。この視点こそが、EAとしての仕事の進め方を変えた根本です。

自分が使っている5つのAI

ChatGPTClaudeGeminiNotebookLMCopilotの5つです。

「5つも使い分けるの?」と言われることがありますが、最初から5つ使っていたわけではありません。ひとつ使ってみて、次を試して、気づいたら5つになっていた。最初の1つで十分です。使い分けは後からついてきます。

ChatGPTは「相談できる友達」

ChatGPTの使い方は、ほとんど雑談に近いです。

「このニュースってどういう意味?」「こういうことで悩んでるんだけど」「これって一般的にどう考えられてるの?」——そういった問いを、検索するよりも先にChatGPTに投げています。

検索と違うのは、文脈を踏まえて返してくれること。会話の流れを理解した上で「それってこういうことじゃないですか?」と返してくれる。これは検索ではなく、会話です。

Claudeが「スイッチを切り替えた」

5つの中で、自分のAI観を根本から変えたのはClaudeです。

きっかけは単純で、「オセロのアプリを作って」と言ったら、本当に作ってくれたことです。

自分はプログラマーではありません。今まで「アプリを作る」という選択肢は、自分の中に存在していませんでした。それが一言で動いた。

これが「AIレンズ」を手に入れた瞬間です。「自分にはできない」と切り捨てていたことを、「AIを使えばどうなる?」という視点で見直せるようになりました。

Claudeの使い方は主に2つ。アプリ開発プロンプト設計です。

スケジュール調整アプリを作りたいと思ったとき、要件を言葉で伝えるだけでベースが動く。GitHubと連携すればそのまま業務ツールとして使える水準になります。プロンプト設計については、音声入力した日本語を整理して英語のメールに変換する、というワークフローもClaudeが担っています。自分の言葉をきちんと構造化された文章に変えてくれる、秘書のようなポジションです。

Geminiは「画像・動画分析の先生」

GeminiはGoogleらしく、マルチモーダルの強さがあります。

少し変わった使い方をしています。自分のテニスのフォームを動画で撮影してGeminiに読み込ませて、「どこが改善できますか?」と聞いています。すると具体的な改善点を返してくれます。コーチに見せるほどでもない、でも自分では気づけない——そういう領域をAIが埋めてくれています。これも立派なAIレンズの働き方だと思っています。

ただし、使いすぎると利用上限に達することがあります。ここぞという場面で投げる、コスト意識を持った使い方が現実的です。

NotebookLMは「アウトプット意欲を上げるツール」

NotebookLMは少し毛色が違います。

複数のソースを読み込ませて、スライドにまとめたり、ポッドキャスト風の音声で読み上げるコンテンツに変換したりができます。自分の場合、このブログ記事を食わせてNotebookLMで整理する、という使い方をしています。

EAの仕事では「難しいことをわかりやすく伝える」という壁が常にあります。NotebookLMはその壁を下げてくれる。アウトプットの形を変えることで伝わり方が変わる——それを実感してから、アウトプットすること自体が楽しくなりました。

Copilotは「職場の同僚」

Copilotは唯一、仕事の中で使うツールです。

社内システムと連携しているため、「給与の確認方法は?」と聞けば社内マニュアルを参照して答えてくれます。ChatGPTと同じような会話ができつつ、社内情報を持っているのが大きな違いです。

さらに強力なのがAIエージェントの構築です。インシデント対応の知識をCopilotに食わせてエージェントを作れば、自分が答えなくても回答してくれる仕組みができあがります。Claudeで作ったプロンプトをCopilotのエージェントに流し込む、という連携も有効です。限定的な領域では「自分がいなくても動く」状態を作れます。

組織に広げるときの一番の壁は「楽しさの未体験」

EAとして、この5つのAI活用を職場に広げようとして気づいていることがあります。

使っていない人が多い理由は、難しいからではないと思っています。楽しさを体験していないからです。

「プロンプトを書かないといけない」と思っている人が多いですが、そんなことはありません。課題を言葉で投げるだけでいい。セキュリティを理由に「会社では使えない」と言う人もいますが、あくまで体験のための第一歩として、スマートフォン1台で個人として触れます。まず体験することが先です。

AIリテラシーの差は、知識量ではなく「自分が体験した非自明なユースケースを語れるかどうか」で現れます。だから自分は部下や同僚に、知識を教えるより先に「触ってみて」と言い続けています。

AIレンズを持ったEAとして、これからどう設計するか

AIレンズを手に入れたことで、EAとしての視点も変わりつつあります。ただ正直に言えば、設計の現場に完全に組み込めているわけではなく、現在進行形で模索中です。

方向性は見えています。

今まで「人が管理するから数を絞る」という設計の前提がありました。AIが監視・管理を担う領域が増えれば、その前提は崩れます。数が増えても管理できる、という世界が来る。

ただし、業務設計と判断は人が担うべきだと思っています。社内システムは業務があってこそのシステムです。その業務を理解して、どこを自動化しどこを人が持つかを判断できるのは、業務を知っている人間だけです。AIが代替できる領域と、人が関与すべき領域を分けて設計する——それがAIレンズを持ったEAの役割だと考えています。

やりたいことはまだある。音声をそのまま動画コンテンツにする、イラストや漫画形式で伝える、NotebookLMの音声機能をもっと活かす。調べれば調べるほど「できそうなこと」が増えてくる。これ自体が、AIレンズを手に入れた証拠だと思っています。自分ができなかったことを棚卸しして、ひとつずつ潰していく。それが今の自分のスタンスです。

あなたの現場はどうですか?

AIを使い分けている話をすると「そんなにいるの?」と言われます。でも自分にとっては、それぞれが明確に違う役割を持った道具です。

あなたの現場では、AIをどう使い分けていますか?あるいは、まだ最初の一歩を踏み出せていない人がいたとしたら——まず1つ、触ってみてください。楽しさは、体験しないとわかりません。


筆者:EAの中の人|事業会社の社内IT部門にてエンタープライズアーキテクトとしてEA推進・ITガバナンス・データ活用・AI活用に携わって10年以上。
本記事の内容は個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。